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希望の党 小池百合子代表の公約「花粉症ゼロ」

希望の党代表の小池百合子氏が公約「12のゼロ」を掲げました。
その中に「花粉症ゼロ」が入っていて、物議をかもしています。

「花粉症ゼロ」は可能なのでしょうか?
また、政府がとるべき花粉症への対応はどうあるべきなのでしょうか?

花粉症ゼロ宣言

発表された公約は「希望への道しるべ」と銘打たれた12のゼロ。

  1. 原発ゼロ
  2. 隠蔽ゼロ
  3. 企業団体献金ゼロ
  4. 待機児童ゼロ
  5. 受動喫煙ゼロ
  6. 満員電車ゼロ
  7. ペット殺処分ゼロ
  8. フードロスゼロ
  9. ブラック企業ゼロ
  10. 花粉症ゼロ
  11. 移動困難者ゼロ
  12. 電柱ゼロ

このうち、最も目立つのが「花粉症ゼロ」です。

花粉症ゼロは可能か?

常識的に考えて、無理でしょう。

希望の党は、「花粉症ゼロを目指したスギ等の伐採促進、国産材の活用促進などにより、林業の再生を目指す」と言っています。

しかし、そもそも花粉症の原因は「スギ」だけではありません。

花粉症ゼロを目指すなら、「ヒノキ」「イネ科(カモガヤ等)」「ハンノキ」「クヌギ」「ケヤキ」「カシ」「タデ」「ブタクサ」「ヨモギ」「カナムグラ」「イラクサ」・・・これら全部に対応しなくてはなりません。
ここですでに不可能です。

ただ、「ゼロ」というから問題なのであって、花粉症対策を進めること自体は歓迎すべきことです。
まずスギ花粉から手を付ける、あるいは花粉症患者への救済措置を行う、などは実に結構です。
あるいは画期的な抗アレルギー薬を開発する、そのために資金を投入するでもいいでしょう。

しかし、政治的なことには立ち入りたくはないのですが、あえて言えば、「期限を決めないゼロ宣言には何の価値もない」ということです。
ケネディ大統領が1961年5月25日の上下両院合同会議における演説で表明した「1960年代の終わりまでに人類を月面に到達させかつ安全に地球に帰還させる」というアポロ計画が意味をなしたのは「1960年代の終わりまでに」と期限を切ったからです。

ぜひ政府にはしっかりした対策をとっていただきたく思います(希望の党は政権とはあまり関係はありませんが)。

スギ花粉症の歴史

スギ花粉症は日本特有のものです。
しかし、昔からあったわけではありません。
戦前・戦後すぐの日本には花粉症の人などほとんどいませんでした。
古代の文献や詩歌にも、春になるとくしゃみが出る、という言葉は出てきません。

海外でも、現在に至るまで、スギ花粉症というのは一般的ではありません。
海外にある花粉症の多くは、牧草用の「ブタクサ」「カモガヤ」「イネ科植物」です。

日本のスギ花粉症のように毎年必ず社会問題となるほどの事態は起こっていません。
外国人は日本に来て、多くの人がマスクをしているのを見て驚くそうです。

実は、スギのような針葉樹は戦後に植林されたものがほとんどです。
従来の日本の天然林はブナ、コナラ、シイ、カシ、サクラなど葉の幅が広い広葉樹が中心でした。

ところが、第2次世界大戦の頃、軍需物資としてたくさんの木が伐採されました。
戦後も空襲によって焼けた家の材料や、まき、炭として伐採は継続されました。
そのため裸になった山々で「植林」が行われます。
その多くは、成長が早く、まっすぐ伸びて、加工しやすい「スギ」でした。
広葉樹に比べ、スギなどの針葉樹は成長が4倍も早いのです。

さらに1950年代~70年代にかけて、建築ブームが起き、材木の値段が急騰しました。
そのため、国有林でも民間林でも伐採は続き、国策としてスギなどが植林されました。
そうして多くの山が一斉にスギなどの人工林に変わってしまいます。

しかしその後、外国から値段の安い材木が輸入されるようになり、国産の材木は競争価値を失ってしまいます。
山の保有者は林業に見切りをつけ、手入れのされないスギ林が残され、その結果、現在、春になるとスギ花粉が大量に飛ぶ、という事態になりました。

スギ花粉症はこのような文脈で読み解くことができます。

現在の状況

スギは風によって花粉を運ぶ風媒花で、風に乗って遠くまで花粉が飛散します。
季節は主に2~4月にかけてです。
そのため、日本での花粉症で最も代表的なスギ花粉症が春先にまん延します。
スギは植えられてから本格的に花粉を飛ばすようになるまで25~30年かかります。

林野庁によると、平成24年のスギ人工林の面積は448万ヘクタールで、森林面積2,508万ヘクタールの18%。ヒノキ人工林の面積は260万ヘクタールで、森林面積の10%を占めています。

林野庁の対策

林野庁はホームページで、次のように述べています。

「林野庁では、花粉発生源対策として、花粉生産量が一般的なスギに比べ約1%以下という特性を持つ少花粉スギ等の花粉症対策品種の開発や苗木の普及等を通じて、花粉の少ない森林(少花粉スギや広葉樹林など)への転換に取り組んでいます」

また、日本中のスギを伐採すればよいのでは? との問いにこう答えています。

「スギ林は、木材資源であると同時に、国土の保全や地球温暖化の防止、水源のかん養等の多様な公益的機能を有しています。これらの公益的機能を持続的に発揮させるためには、一度に伐採して植林を行うことは好ましくありません。このため、森林・林業基本計画に基づき伐採された森林について、順次少花粉スギの植栽や広葉樹の導入などの多様な森林整備を行うことにより、公益的機能を維持しつつ花粉の少ない森林への転換を進めていくことが必要と考えています」

スギ植林の現在

花粉症の患者数は3人に1人とされ、国民病となっています。
にもかかわらず、現在も毎年1600万本近くの苗木が生産されています。
そして、花粉が少ない「小花粉スギ」の植え付けはその10%程度でしかありません。

 一般のスギに比べて花粉量が1%以下の小花粉品種は130種類以上、無花粉のものは2種類が開発されています。
しかし、まだ木材としての実績がないため、林業関係者に積極的に採用されるには至っていないようです。

国は、ここに補助金を計上して、改善の方向には向かっています。
ですが、実際に花粉が減るには順調にいっても数十年かかる見通しです。

安倍首相の「花粉症撲滅」宣言

実は、安倍首相は2015年3月の参院予算委員会で、「来年度から発生源のスギの伐採と同時に、花粉の少ない苗木への植え替えを支援する。花粉の少ない森林への転換を進めていきたい」と、「花粉症撲滅宣言」を出しています。

これからに期待すること

希望の党、小池百合子氏の「12のゼロ」は、誠実さを欠くものです。もっとも、期限を区切って「いつまでに」と、ケネディ大統領のような大英断を、小党派代表に求めるのは酷かもしれません。ただ、せめて「スギ」花粉ゼロ、ならもう少し真実味があったのですが・・・。

今のペースでは、スギをすべて小花粉種に置き換えるとしても、それには700年かかるといいます。
ペースを100倍にし、70年でスギを全部植え替える、あるいは、アレルギーそのものを完全に抑える特効薬の開発に1兆円投入する、など、具体的で実のある公約を掲げていただきたいものです。

せめて、我々の孫の世代までには花粉症を何とかして欲しいと思います。
ですが、医学的な側面に限っても、「アレルギーシステムの掌握(花粉症の根治)」は、「ガンの特効薬開発」「アルツハイマーの完全治癒」「テロメア操作で老いを無くす」よりも遅れるのかもしれません。

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